スマートフォンと中国の女性向けゲーム
日本で女性向けゲームの市場が成立して30年を目前にしています。
日本に比べて中国の女性向けゲーム市場は歴史が浅く、市場として定着したのはスマートフォンが普及した後、特に2015年『奇跡暖暖(日本名:ミラクルニキ)』が起爆と言われています。まだ若い市場である分、ユーザーの年齢層も低い傾向です。
女性向けゲームのボリュームゾーンは16歳~35歳で日本よりは多少若め。
2015年『奇跡暖暖』の登場、2017年『恋与制作人』のヒットで徐々に作品が増えています。
【参考資料】
极光数据:女性手游用户规模达3.67亿,去年净增超男性
MobTech 2020“她游戏”研究报告:国内女性玩家达3.9亿,以轻氪金玩家为主
モバイル市場初期には「橙光」というビジュアルノベル※プラットフォームを通じて、多くの恋愛ノベルゲームが人気を集めました。 2012年にリリースした本プラットフォームのユーザー数は5000万以上、その中で85%が女性ユーザー、70%が24歳以下のユーザーだそうです。
※グローバルでは「インタラクティブ・フィクション」という名称で定着しつつあります。
「橙光」のようなノベルゲームプラットフォームは大手企業が運営しているサービスも含めて多数。プラットフォーム上では女性向けノベルゲームが人気を集めています。中では『アムネシア』や『剣が君』など日本の人気タイトルもサービスされています。
「インタラクティブ・フィクション」プラットフォームでは
日本のノベルベースの乙女ゲームが人気を得ています。
『恋与制作人』の大ヒットで市場が変わる
ノベルゲームが中心だった中国の女性向けゲーム市場の地形を変えたゲームとして『恋与制作人』の話は欠かせないと思います。このゲームは『恋とプロデューサー』というタイトルで日本でもサービスしており、7月からアニメも放映開始しました。
『恋与制作人』は経営難に陥った番組制作会社を再建しながら出会う4人のヒーローとの物語を楽しめる乙女ゲーム。日本でもファンが多い着せ替えRPG『ミラクルニキ』のデベロッパーであるPaperGamesの作品です。
2017年12月、中国でリリースしたこのゲームはリリースと同時にランキング上位にランクインを果たし、2018年1月の売上は約3億元(当時の為替レードで約51億円)を叩き出しました。女性向けゲームの底力を見せつけ沢山の話題を呼び集め、様々な分野のコラボレーションを行うなどすぐ人気IPとして定着しました。
ゲームそのものの成果も鮮やかですが、もう一つ注目を集めたのは登場キャラクターに向うファンの情熱です。まるでアイドルのファンダムを想起させるファンコミュニティの団体行動が既存の女性向けゲームとは多少異なる様子を見せました。このようなキャラクターに対する高い忠誠度はキャラクターを軸のビジネスモデルの可能性を広げてくれました。
『恋与制作人』の作品とキャラクターの人気は様々な方面の展開を可能にしました。
特にファンコミュニティがキャラクターのバースデーを大々的に祝うのは日本に多少馴染みのない文化。
スケールも大きいです。(上記写真(右)に広告が掲載された場所はなんとNYのタイムズスクエアです。)
数々の企業が目を向ける
『恋与制作人』の華麗なる成功を起点に、女性向けゲームの成長にブーストがかかります。数多くの作品の中で鳴かず飛ばずのタイトルもあれば、意味のある成果を出したタイトルもあり、2019年からは大手企業の参画も増えユーザーの選択肢は広がりつつあります。
また、日本の声優と中国の声優を同時に起用するなど、最初から日本展開を念頭においているような動きが目立ちます。以下、何作品か軽く紹介しますね。
■『食物語』
Tencentがパブリッシングしている中国料理の擬人化ゲームはランキングの中位圏を着実にキープしている堅実なタイトル。4月に台湾でもリリースし売上ランキング1位を取るなど成績を記録しました。
■『未定事件簿』
『崩壊3rd』など日本でも人気のタイトルを多数持つデベロッパー「miHoYo」の『未定事件簿』。6月頭に課金を含めたOBTを実施、2020年7月30日、中国でリリース。日本語CVは岡本信彦さん、諏訪部順一さん、福山潤さん、石川界人さんが担当するそうです。
■『時空の中の絵旅人』/『光と夜の恋』
Neteaseの『時空の中の絵旅人』、Tencentの『光と夜の恋』
中国の2代トップメーカーによる新作。2021年以降は大手の参戦で競争が激化する可能性が高まっています。 『光と夜の恋』は先日日本語CV(石川界人さん、森川智之さん、岸尾だいすけさん)が公開されました。
前述した『恋与制作人』は様々な要因で日本ではあまりヒットしていないですが、日本国内のファンによる評価は高めです。
今後、高いクオリティを持つ中国ゲームが本格的に日本市場を狙ってきたら、日本の女性向け市場がどのように変わるか気になるところです。
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